労働組合の組織率は、低下の一途をたどっています。
一部の過激な組織のイメージから、労働組合の印象が悪くなった事も事実ですが、それが組織率の低下とは結び付きません。ここには大きな2つの理由が存在しています。
私自身、労働組合活動に携わってきて、組合員からは「労働組合は減っているのだから必要ない」と言われてしまう事もたびたび。
ちなみに本記事の結論と、もしあなたが組合執行部でそういった疑問を投げかけられた場合の対応法は同じです。
労働組合組織率の低下は、非正規雇用者の増加
2つの大きな原因があり、まず1点目の結論はシンプルで、正社員が減り、非正規雇用(パート、契約社員)の雇用が増えているから。
ユニオンショップ制を敷いている労働組合であっても、非正規雇用は組合員の対象外としている労働組合は多いのものです。
人手不足は加速していくが
ご存知の通り、今の日本は圧倒的な働き手不足です。少子高齢化の影響でこの流れはますます加速していく事は承知の通り。
しかし一方、求人広告に目を通して見ると、正社員で中途雇用を募集しているところは極めて限定的です。ちなみに今手元にある求人情報誌で、「未経験可として」多く中途正社員募集をしている業界は以下の通り。
- 運送業
- 警備
- 建築・土木
- 介護
他にも未経験可としている業種もありますが、IT関連企業や医療(薬剤師・看護師)など特殊な技能を必要とするもの、あるいは著しく待遇が悪い業種ばかりです。
例えば、40歳で「人手不足らしいから」と言って年収を上げようと転職活動しても、それまで培った技能を生かせるような職場で無い限り、求人はありません。
アルバイトやパートの求人ばかり
2015年あたりから、日本の企業業績は堅調です。1ドル90円台が当たり前だった時代はとうに過ぎ、自動車をはじめとする輸出関連企業は軒並み増収で、政府主導でベアが行われるというような事も生じました。
しかし一部の富裕層を除き、私たちの生活が豊かになっていません。企業が従業員へ還元していなからです。その事はつまり採用を行う際にも大きな影響を及ぼしており、正社員を雇用するのではなくアルバイト・パートばかり採用を続けています。
見掛け上景気の良い環境が続いているものの、希望退職を募る企業は後を絶ちません。この30年の教訓を企業としては生かし、雇用を切りづらい正社員の雇用を行わないのです。
そして何より大きな要因に、近い将来のAI技術が発達するという事実。このことは、メガバンクが将来のAI技術を見越し、現段階から新入社員の雇用すら抑制してきていることからも明らかです。
IT関連企業・M&Aで成長企業など企業形態の変化
2つ目の理由として、2000年以降、いわゆるIT企業の隆盛はめざましいものがあり、そういった企業は労働組合が無い場合はほとんどです。また徐々に規模を拡大していく企業にもそういった傾向が強く見られます。(※ヤフーなどには労働組合あり)
やはり労働組合は企業として歴史がある会社に存在する場合がほとんどで、新興企業には労働組合は存在しません。
労働組合が必要かどうかでは無く、若い経営者、若い従業員ばかりの会社であれば、なんとなくとも「労働組合は古臭い」と思ってしまうのも当然の事で、また少し興味があったとしても「組織率が低下している」などと目にすれば結成すらしようと思えなくなるのは必然ですらあります。
労働組合の組織率低下の意味すること
労働組合の組織率が低くなる、そういった流れが当然であるという流れは憂慮すべき事です。本当に労働組合など必要ないというような良い社会が訪れれば、それは良い事かもしれませ。しかしいつの時代であっても最後に苦しむのは労働者です。
労働組合の組織率の低下にある最大の要因、非正規雇用社の増加にこそ、焦点を当て、改善していくべき事であり、そしてそれは組合執行部に課せられた課題でもあるのです。