労働組合の役員となるような時、おそらく家族や親しい方からこう言われます。「労働組合の仕事なんて会社から目をつけられるんじゃないの?大丈夫?」と。
確かに労働組合には2通りのパターンがあり、大きく性質が異なります。これは良い・悪いの問題ではありません。組織の在り方が根本的に違います。
- 会社の不条理な行為に対して闘っていく組織
- 労使協調の(御用組合とも揶揄)組織
本記事では「大企業の労働組合」の役員が出世コースなのか?という件についてざっくり解説していきます。
大企業労組の場合、役員は選ばれた人材
御用組合、という言い方は私自身を少し貶める言いまわしなので、「労使協調」としますが、労使協調というのは、会社と労働組合が積極的に協力し得る関係です。
そういった企業内労組の場合、会社に対して不満が極めて強い組合員を登用する事はありません。ただ不満をぶつける事だけでは何も会社が改善しないからです。
もちろん組合役員として、しっかり会社の課題(不満が生まれる原因)を把握し、しっかりと具体的な改善提案へと要望できる人材が求められます。
労使協調の基本的な考え方
会社に歴史があり、規模が大きく、経営も安定的、そして従業員数が多い。こういった場合、労働組合は労使協調路線となるケースが多くなります。
その根本的な考え方は「会社経営の発展・安定のために、組合員(従業員)と力を合わせて頑張っていこう」というところに集約されます。
実際、この考え方は大きな企業ほど割と大事で、労働組合が会社を弱体化させる組織となっていては、自らの首を絞める事にもつながりかねません。そういった組織で大切なのは、組合役員を誰が務めるか、と言う事です。
組合役員は適任者をチョイスする
これは何も企業内労組だけではありませんが、能力的に信頼のおけない人を執行部に入れる事はありませんよね。適任者を見つけ、立候補してもらいます。
もちろん選挙をして選出されるわけですが、働きやすい大企業ほど労働組合の役員になりたくない人は多いものです。業務+組合の仕事は、実際大変ですからね。そして組合員からの「組合費が高いぞ」「御用組合じゃないのか」と言った批判にも耐える必要があります。
実際それほど経営に問題のないような会社だと組合員は平和ですから、そういった会社の組合員が抱く不満の矛先は労働組合に向けられます。
組合員から批判を受けると「だったらお前がやれ」と思ってしまいますが、それを言っちゃおしまいなので、心にそっとしまいましょう。
また、労使協調型の労働組合と言えども、組合員からの相談は結構きます、深刻なものも。そのため、ただ会社に忠実というような人材を委員長に据えるというよりは、会社としても重責である組合役員で社会人経験を積ませる、という側面も多いのです。
組合委員長の資質と役割
それまで持っていなかった、労働基準法をはじめとし、様々な知識を身につける必要があります。そして社内の立場では一社員ですが、委員長となると、会社トップと同等の立場となり、様々と会社の内情にも精通していく事になります。
組合員の意見をしっかり聞き、会社ともしっかり交渉していく、そういった事は組合役員でないと経験できない事なのです。まして執行委員長ならなおさらです。
大企業の場合会社役員は労組出身者が多い
ここも重要なポイントです。歴史の浅い会社・労組ならばこのような事にはならないのですが、大手企業の場合は会社役員が労組の元役員というケースはかなり多いのです。
例えば大企業の花形ポストである人事部長が元労組役員なんていうケースは割と多く、そのような会社の場合、組合役員=出世コースとほぼ断定できます。
ただしそのことで「出世のために組合役員をやる」と非難する組合員が出てくる事になります。しかし非難するだけで、自ら役員にはなろうとは決してしませんし、役員を遂行する能力もありません。
社内に複数労組がある場合はこの限りでない
日本を代表するほど大きな会社になると、企業内に複数の労働組合が存在するケースがあります。その場合は、組合によって運動方針が異なるので、一概に出世コースとは言えないので注意が必要です。
まとめ
大企業での労働組合役員であれば、出世コースである可能性は高く、判断基準は以下の通りです。
- 会社役員に元労組出身が多い
- 労使協調路線である
これに当てはまるかどうかが判断するポイントと言えます。
もっとも今は「出世なんかしたくない」人が多いのが現状ですし、労組役員を務める事でかえってワークライフバランスが崩れてしまうかもしれません。
しかし、これまで経験した事のない仕事が出来るのが労働組合活動の魅力。もし声が掛かったら出世抜きに前向きに検討してみては如何でしょうか。
もちろん「ただ組合役員をやった」だけで、出世は難しいケースもあるでしょう。せっかくならば、労働組合役員と相性抜群の、社会保険労務士の資格を取得すれば、社会人としてのスキルアップは間違いなしです。